口腔内の微生物たち
口腔内の微生物たち
前回は位相差顕微鏡とはどういったものなのかということをお話しさせていただきましたが、今回は辻中歯科医院の位相差顕微鏡で見ることのできる口腔内の微生物(細菌)についてお話しさせていただきます。
①らせん状細菌
らせん状の糸ミミズのような微生物で、歯周病の原因となる微生物である可能性があります。
歯茎の中で毒素を出しながら増殖し、歯周病を進行させてしまいます。
非常に毒性の強い微生物で、正常な免疫を抑制し歯周病の治りを妨害してしまいます。
歯周病の原因となるらせん状細菌がたくさん見られると歯周病が進行している状態もしくは将来的に歯周病が進行しやすい状態であるといえます。
歯周病の原因となるらせん状細菌の代表的な微生物にはトレポネーマ・デンティコーラ属菌があります。
らせん状細菌は全部で60種類ほど存在しますが、60種類全てが悪い種類の菌、悪玉菌といわれるものになります。
②線状細菌
線状の長い菌で、ヒトの口腔内に常在する歯周病の原因となる菌です。
お口の中の歯垢汚れ(プラーク)は粘りを作り出しやすい菌です。
また、糖分解能がなく臭いの原因となる酪酸を産生するため、歯周病独特の口臭を引き起こす原因にもなります。
体の水分が少ない状態であると増えやすい傾向にあります。
線状細菌は、他の微生物と共凝集することによってバイオフィルム(細菌の膜)を形成します。
※バイオフィルムとは、微生物が共凝集し固相表面に形成した集合体です。
水中の固相表面にはぬるぬるした粘着物がしばしば形成されます。お風呂場の排水溝や、キッチンの三角コーナーのヌメリなどにみられるこのような粘着物は微生物が形成する生物膜(バイオフィルム)です。
線状細菌の代表的な微生物にはフゾバクテリウム・ヌクレアタムがあります。
③真菌(カンジダ)
ブツブツとしたつくしのような微生物はカビ菌(カンジダ)です。
カンジタなどの真菌と言われるカビ菌はお口の中に必ず住み着いている口腔内常在菌です。
通常は直接歯周病の原因となることはありませんが、他の歯周病原因菌が定着する格好の足場となってしまいます。
お口の中の環境が悪化し、お体の免疫力が低下すると微生物のバランスが崩れてカンジダ菌が異常に増加することがあり、カンジダ菌が多量に存在すると歯周病が進行しやすい状態になってしまいます。
④球菌・短桿菌
毒性の強い歯周病の原因となる微生物のひとつです。これらの微生物ははお口の中に元々存在するものではなく、保護者が子供へお箸やスプーンの使い回しをすることなどにより細菌を移してしまう原因となります。
進行した歯周病の方に見られます。
また、歯周病だけでなくむし歯のできやすい方にも見られます。
球菌の代表的なものにはコッカス属のストレプトコッカス・ミュータンスがあり、この菌は他の微生物と協力して歯垢(プラーク)を作り出しむし歯を生成します。
⑤口腔アメーバ
大きなアメーバ状の細胞で白血球や他の微生物を捕食してしまいます。歯周病が重度の場合に見られることが多いです。
アメーバは、体の防護反応として口腔内の微生物と戦うために出現する白血球を食べてしまうのですから、良くない原虫です。
アメーバは口腔粘膜組織の抵抗力が低下した時や、炎症が存在する時のみに感染が成立します。そのため、お口の中の環境が悪くなると出現しますが、反対にお口の中の環境が良くなると自らいなくなってくれるため、お口の中の環境を整えることが大切です。
⑥口腔トリコモナス
口腔トリコモナスは赤血球や他の微生物を食べてしまう原虫です。
歯周病が進行している状態のときにトリコモナスが見られることが多く、口腔内に存在するとどんどん歯周病が進行してしまう原因となります。
上記でお話しした微生物たちは当院の位相差顕微鏡で確認できる微生物です。
人によって口腔内に存在する微生物はそれぞれ違います。
むし歯や歯周病の原因となる微生物はどういった微生物なのか、微生物の活動性はどうなのかというところを是非、辻中歯科医院に来て確認し、あなたに合った口腔ケアをしていきませんか。
参考資料:picoral細菌図鑑