お口が老化する?口腔機能低下症とは?
こんにちは。辻中歯科医院のドクターです。すっかり梅雨の時期になりましたね。
最近高齢化に伴い老化、老化と叫ばれておりますが我々歯科業界も無縁ではありません。
というのも、厚生労働省が発表した日本の死因ランキングではむせに伴う肺炎が上位に入ってきておりガンや心臓疾患、脳血管疾患についで4位になります。
老化に伴い、お口の中も衰えてきます。
目次
老化とは
教科書的には老化とは加齢に伴って生体機能、例えば筋力、神経伝導機能、肺活量、病気に対する抵抗力が低下することとされています。
その中でも我々口腔内の老化に焦点を当ててみましょう。
口が衰えるとは
まず口が衰えるとは、歯など器官の機能低下、飲み込みなどの機能の低下の2つに分けられます。まず器官の機能低下について見てみましょう。
歯の構造
まず、お口を開けると歯が見えます。いわゆる白い歯というのは外側からエナメル質、象牙質、歯の神経の3層構造でできております。
まず、歯の表面はエナメル質という層が覆っており、加齢が進む中で、石灰化が進行することにより、透明性が低下し、色自体が暗くなります。硬く、脆くなり亀裂が生じやすくなります。
また、加齢に伴うすり減りで噛み合わせの高さが変化したり、歯茎との隙間にくさび状の磨耗を伴うこともあります。
次に、象牙質(歯の中、しみる部分)についてですが、加齢により同様に石灰化しやすくなります。また、歯の神経は加齢に伴ってどうなるかと言うと、同じく石灰化し痛みを感じる程度が鈍くなります。歯は全体的に黄色のような色調を帯びてきます
歯茎についてですが、弾力性が下がり、また歯茎が下がってくることで歯の根っこが露出しやすくなり、虫歯になるリスクが高くなります。歯茎が下がることにより歯と歯の間に物が詰まりやすくなります。また入れ歯の安定感にも関わってきます。
唇はどうでしょう。唇も歯茎と同じように加齢に伴い萎縮して弾力性がなくなります。弾力性が低下することにより、口が大きく開けづらくなり入れ歯の出し入れがしにくくなります。口角が割れやすくなります。
唾液について
唾はもともと唾液腺という器官から作られます。加齢に伴い、唾液腺が萎縮して唾液の分泌が低下する。唾液の分泌が低下することにより自浄作用(自然な洗浄作用)が低下するので、口の中が汚れやすくなります。
味覚について
そもそも味覚はどこで感じ取っているのでしょうか。味は塩味、甘味、酸味、苦味、うま味の5味を舌の表面にある味蕾と呼ばれる器官で感じ取っています。
加齢に伴って味を感じる味蕾が萎縮してしまいます。唾液分泌量低下に伴う口腔内の乾燥、薬の副作用に伴う味覚の変化などが考えられます。
感覚については全体的に鈍くなります。自覚症状が乏しいため症状が悪化しやすくなります。
お口は食べ物を捉える捕食、咀嚼、唾液分泌、味覚、嚥下、構音機能など様々な役割を果たします。お口の機能低下とは歯の喪失だけではなく、入れ歯の不具合唾液分泌低下、口唇や舌の不活動(廃用)によって低下をきたします。
オーラルフレイルとは?
オーラルフレイル、横文字で読みにくいですが、オーラルフレイルとはわずかなむせや食べこぼし、滑舌の低下といった口腔機能の低下、食べる機能の低下、さらには心身の機能の低下までつながるということを示した概念です。
つまり、高齢者は口腔機能が徐々に低下し、口のささいなトラブル(滑舌低下、噛めない食品の増加、むせ、など)が生じているにも関わらず放置してしまうと食欲低下、食品多様性の低下が起こる。さらに進行すると、本格的に口腔機能が低下(咬合力低下、舌運動機能低下など)し低栄養やサルコペニア(加齢に伴う筋肉量の減少など)が生じ、最終的に食べる機能の障が生じます。意欲の低下→栄養状態の悪化→筋肉の減少→生活機能障害と進行していく。
後述します口腔機能低下症はオーラルフレイルでいうと第3レベルに属します。
口腔機能低下症とは?
口腔機能低下症は教科書的にはう蝕や歯の喪失など従来の器質的な障害とは異なり、いくつかの口腔機能の低下による複合要因によって現れる病態です。放置していると咀嚼障害、摂食・嚥下障害など口腔機能障害に陥り、機能障害をきたし低栄養やフレイル(加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能)が低下し複数の慢性疾患の併存などの影響もあり生活機能が障害され心身の脆弱性が出現した状態ではあるが適切な介入・支援により生活機能の維持・向上が可能な状態)、サルコペニア(加齢に伴う筋肉量の減少、筋力の低下など)を進展させるなど全身の健康を損なうものと書かれています。
高齢者では虫歯や歯周病、不適切な入れ歯などの要因以外に加齢、基礎疾患によっても口腔機能が低下しやすいです。また、低栄養や廃用、薬剤の副作用も影響し様々な病態を示します
そのため、介入する際は、個々の生活環境、全身状態を踏まえ管理していきます。
口腔機能低下症の症状
口腔機能低下症の症状は口腔内微生物の増加、口腔乾燥、咬合力低下、舌、口唇運動機能低下、舌の筋力低下、咀嚼・嚥下機能低下と様々あります。
診断基準としては7つの下位症状(口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下)、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下を検査して評価していきます。
7項目中3つ該当したら口腔機能低下症と評価します。以下検査の詳細です。
①口腔衛生状態不良の検査
舌の色(舌苔の付着)について評価していきます。
50%以上の付着で口腔衛生状態不良とします。
②口腔乾燥の評価
当院では口腔水分計ムーカスを用いて評価します。
舌先から10mmのところで計測します。計測値27.0未満で口腔乾燥とします。
③咬合力検査
当院では残存歯で評価します
根っこだけの歯やグラグラしている歯は除外して20本未満は咬合力低下とします。
④舌口唇運動機能低下
当院ではパタカラを5秒間に発音してもらい1秒間にそれぞれ何回発音できているか機械にて評価します。パタカラ1秒あたりの回数が6回未満で舌口唇運動機能低下とします
入れ歯をつけている方はつけたままで計測します。
⑤低舌圧の検査
当院では舌圧計にて評価します計測器の先端についた風船を下で押しつぶして圧力を測定します。低舌圧は300k pa未満で評価します。
入れ歯をされている患者さまは入れ歯をつけたままで行います
⑥咀嚼機能低下の検査
当院では咀嚼能率スコア法と呼ばれる、グミゼリーを30回噛んでいただいて、そのあとの粉砕度を評価します。粉砕度が低ければ咀嚼機能低下と判定します。
入れ歯をされている患者さまは入れ歯をつけたままで行います
⑦嚥下機能低下の検査
飲み込みについて普段どのように生活されているか問診形式で記入いただきます。
多く当てはまる場合は嚥下機能低下と評価します
口腔機能低下症と診断されたら
診断されたら改善していくため以下のトレーニングを行なっていきます。
1口腔衛生状態不良 ・・ガラガラうがい、舌ブラシ、トレーニング
2口腔乾燥。・・・・・・ガラガラうがい、舌回し、唾液腺マッサージ
3咬合力低下・・・・・・あいうべ体操など
4舌口唇運動機能
ぱの発音が低下している方
・空のペットボトルを吸ってへこまさせます。空になったペットボトルに強く息を吹き込む
・パタカラ体操
たの発音が低下している方
・舌回し
・パタカラ体操
かの発音が低下している方
・あいうべ体操
・パタカラ体操
5低舌圧・・・・・・・・・・・舌回し、舌ブラシ清掃
6咀嚼機能低下・・・・・・・・あいうべ体操、ガムトレーニング
7嚥下機能低下・・・・・・・・舌回し、舌ブラシ清掃
上記のような検査を行って定期的にトレーニングを行って改善を図っていきます!
最後に
お口に関してもしむせや飲み込みづらさなど気になることがあればぜひスタッフにお声掛けください。
つきまして、今週のブログは以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。